私はそれから、彼の顔を見つめ、彼の奏でる音を聞きながら時間を過ごした。そし
て時折は、窓の外の光景が移り変わっていく様を視界の端に映しながら。
そんな風に、ただ時間だけが無意味に過ぎ去っていった。
あれだけ嫌だったあの曲にも、今では慣れてしまった。繰り返される意味のない時間
は、次第に意味を取り戻し、それ以上のなにかを私に与えてくれるようになる。
その音を。彼の声を。私はそれらを聞きながら、このままここで過ごしていくんだと、
心の端でなんとなく思い始めていた。
しかし私の身体は、そんな弱い心を、泣き出したくてたまらない心を、あざ笑うかのよ
うに勝手に動き出す。言葉が口をついて出た。
それは私にとって――そして私以外の誰かにとって、すごく意味のある言葉だった。
「どんな今日だとしても」
「……え?」
「新しい日々が、塗り替えてゆく」
「そして……明日は……」
希望に満ち溢れているはずだった。
私は、思い出していた。思い出したくないこと。
それでも、思い出さなくてはいけないことを。
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